平衡系の揺らぎ
平衡系の揺らぎについてカノニカル分布を例にメモをとりました。内容はCallenのテキストの19章が対応しています。
(2020/05/19追記)
平衡系の揺らぎと大偏差原理の関連についての手書きメモを置いておきます。平衡状態では揺らぎが無視できるのでその平均値が重要です。平均値を知るには大数の法則や中心極限定理が有用です。ところがこれらはその性質ゆえに熱力学極限N→∞での情報しか与えてくれません。大偏差原理はNが有限の場合でも成り立つ性質であり、めったに起こらない平均値から大きくズレた値についての情報も含んでいます。それゆえに大偏差原理は揺らぎを知りたい場合に有用です。
(参考)
大偏差原理については(非常に中途半端ですが)
大偏差理論の統計力学への応用 - nayochev3teamのブログ
などにメモが置いてあります。また、上の手書きノートの内容については以下の論文をのIntroductionを参考にしています。
(ただし、この論文の主題は時系列についての大偏差原理です。)
(2020/09/30追記)
定常状態での揺らぎについてもメモを置いておきます。平衡状態近傍では揺らぎの時間反転対称性によって相反定理が成り立つ。しかし、非平衡定常状態ではこの相反定理が破れている。この破れ具合を現す量として不可逆循環という量を導入できる。
隠れたエントロピー生成
異なる階層の間の関係をエントロピーによって議論する際に登場する隠れたエントロピー生成についてまとめておきました。今回は隠れたエントロピー生成の定義と積分型揺らぎの定理について
https://arxiv.org/pdf/1209.6333.pdf
を参考にまとめておきます。非平衡定常状態での階層性については
https://arxiv.org/pdf/1211.3805v1.pdf
が参考になりそうです。
2020/5/08追記
非平衡定常状態との関連について揺動応答関係(fluctuation response relation: FRR)の破れについて数行付け足しました。以下の論文によればHarada-Sasa等式によれば定常状態の系のエネルギー散逸率はFRRの破れと結びつけることができます。FRRの破れはpotential switching modelにおけるPoisson過程に従う変数と粒子の位置変数のタイムスケールを分離するとゼロになりますから、これはちょうど平衡状態と非平衡定常状態の間に生まれる隠れたエントロピー生成に対応しており(エネルギー散逸率=FRRの破れ(の積分)ですからエントロピーとの次元は温度入れれば合います。)、その大きさをFRRの破れのスペクトルによって視ることができるということが分かっています。
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.117.070601
非平衡熱力学
非平衡熱力学、特に定常状態の熱力学と揺らぐ系の熱力学について勉強したことをまとめておきました。まだ未完成ですが早めに載せておきます。
2020/06/27(追記)
ノートが完成する気配がないため、一旦しまいます。揺らぐ系の熱力学について手書きノートだけ置いておきます。
(補足)手書きノートの中で局所詳細釣り合いを証明抜きで定義として持ち出していますが 、実際これはHamilton系とLangevin系のそれぞれについて示すことができます。
力学系において異なるタイムスケールを分離する方法の入門として特異摂動の初歩的な部分を調べたメモを載せておきます。
射影演算子法についても簡単にまとめたものを載せておきます。
統計力学おすすめロード(?)
1冊目: 小田垣孝 「統計力学」
私は前半部分しか読んでいませんが、細かい話はせずに統計力学の大枠をまとめてあると思います。演習問題が良かったです。
この上巻では確率論の基礎から始めてミクロカノニカル分布、カノニカル分布まで扱います。細かい所まで丁寧に書いてあるので速習には向きませんが1行ずつ読めば統計力学の基礎をマスターできると思います。ただし、熱力学の章がないので熱力学の基礎、特に平衡状態の記述法とルジャンドル変換を勉強しておく必要はあります。
1冊目: 西野友年「ゼロから学ぶエントロピー」
前半では熱力学のエントロピーの性質を、後半では統計力学のエントロピーの性質を扱います。高校を卒業したばかりの新入生でも多くの部分を読むことができると思います。やや情報理論よりの内容も含まれています。
1冊目: 久保亮五 編「大学演習 熱学・統計力学」
演習問題がたくさん載っていますが、解説部分が細かい所までまとまっていました。全てを読んだわけではありませんが、他の本ではあまり触れられていないマニアックな内容も含まれています。
平衡系の統計力学を学び終えた後に非平衡統計力学を勉強しようと購入しました。ボルツマン方程式とH定理から始まり、不可逆性の起源として粗視化を紹介します。後半はブラウン運動についてアインシュタインの理論や射影演算子法によるランジュバン方程式の導出が紹介されます。この本は何よりリファレンスが分かりやすいです。有名なゆらぎの定理も紹介されています。
その他、おすすめの書籍がありましたらコメントしてくださると嬉しいです。
大偏差理論の統計力学への応用
この記事は大偏差理論について
[0804.0327] The large deviation approach to statistical mechanics
を参考に訳したり付け加えたりしているものです。かなり中途半端な状態なのでこれを読んで理解できるとは思いませんが参考文献と照らし合わせて間違い探しをするような気持ちで読んでいただければ(ほんの少しくらいは)理解できると思います。(この記事は勉強が進み次第、随時更新していきます。)
表題は大偏差理論の応用とありますが、統計力学の基礎付けには大偏差理論があるといってよく、Legendre変換が自然に現れることによって何故熱力学や統計力学でLegendre変換が登場するのかを理解することができそうです。
Boltzmannエントロピーが何故対数であるのかも自然に理解することができます。