熱力学おすすめロード(?)
熱力学は本によって流儀や前提が異なるためどういう順番で学ぶのが最適なのか未だに分からないのですが、もし自分が過去に戻って学び直せるならこの順で勉強したいという意味でロードを作りました。
1冊目: 菊川芳夫「熱力学」
標準的なテキストと言っていいと思います。まえがきによるとFermiのテキストを参考にしているようです。本書ではまず経験温度で議論を進めた後にカルノーの定理で絶対温度を定義します。絶対温度についてだけで1章割かれていて自分はその章を見るために購入しました。
1冊目: 久保亮五 編「大学演習 熱学・統計力学」
演習書として利用する方が多いようですが解説部分が非常に丁寧に慎重に議論されているように感じます。公理論的ではありませんが、第0法則による温度の存在定理などはかなり参考になりました。
2冊目:田崎晴明 「熱力学 現代的な視点から」
等温環境を認めて等温過程から始めるスタイルです。そのため熱の定義が後半に成されるため従来の第1法則から考えるテキストとはかなり違うので1冊目には厳しいと思います。ですが、論理に隙の無い教科書だと思います。かなり数理色が強く証明を追うことはできても飲み込むのに時間を要する印象です。
2冊目: 佐々真一 「熱力学入門」
数学的な厳密性をやや犠牲にしつつも整然とした論理で書かれていると思います。特徴としてはエントロピーを断熱過程の不可逆性の指標として導入する節があります。
3冊目: 清水明 「熱力学の基礎」
熱力学関数としてのエントロピーの定義から始まります。そのため物理のテキストというより凸関数の理論を熱力学を舞台にして書いたテキストのように感じます。多くのテキストでは平衡状態が(TVN)で書かれますがこの本では(UVN)なので、これを読んでやっと統計力学の基礎を理解できたように感じます。
3冊目: H. Callen 「熱力学および統計物理入門」
公理論的な熱力学の先駆的なテキストだと思います。エントロピー表示の熱力学から始まる論理は上の本と同じです。下巻にはオンサーガーの関係式についての章やエントロピー表示の統計力学の導入の章があります。
その他、良いテキストがありましたらコメントして貰えると嬉しいです。